妻たちの事業承継①;「奥様は魔女」ではなく、「奥様は経理」
オーナー企業では社長の奥様が経理を担当されていることがあります。
会社の大切な資産を守る役割が経理。ほかでもない奥様に任せることが一番安心だ。
その気持ちは私にもよくわかります。
「事業承継が進んでいない」
「後継者がいない経営者の高齢化が進んでいる」
新聞で毎日のように見かける記事です。
ということは。
経理担当者の奥様も同じく高齢化しています。
女性に向かって「高齢化している」とは、まことに言いにくいことですが。(笑)
ただ、誰もが等しく年を重ねていきます。
ご提案します。
まずは奥様を休ませてあげませんか?
事業承継士である私が代わりに貴社の経理を担当します。
「本当に大丈夫なのか?」
当然、そう思いますよね。
もちろん、私のことを面接の上で使ってくださいね。
また、私は貴社の社員(従業員)にも役員(取締役)にもなりません。
業務委託契約を結んでください。きちんと契約の有効期限を定め、業務内容も契約書に明記します。
また、出納担当は古参の社員に任命してください。つまり、私は貴社の現金預金は一切動かせないようにしてもらっています。
この方法の主な利点は以下です。
①経理部門は会社の中で最も普遍化した機能です。つまり、どんな業種であってもベースになる理論は同じです。具体的には簿記というルールに従って会社の活動を記録していく役割です。
私は海外子会社の経理を担当した経験もあります。もちろん細かいやり方は異なりましたが、基本的な考え方は同じでした。
事業承継の下準備として、まず着手する部門は経理部門が最適です。
②事業承継のまず第一歩になります。長年連れ添った奥様が一足お先に「引退」された姿を見たら、きっと自分の引退後の姿を思い描き始めます。
同時に、現場を離れ会社をより客観的にみられるようになった奥様から、あなたは貴重なアドバイスをもらえるようになります。
③顧問税理士の先生が、私のような者がジョインすることを警戒されることがあります。大丈夫です。私は20年以上、オーナー中小企業で経理を担当してきた企業内中小企業診断士でしたが、税理士の資格は持っていません。
むしろ税理士の先生からは喜んで頂いています。なぜなら、私は法人税申告書の別表や付属明細に関してもよく理解しています。「今までよりも申告の仕事がしやすくなった」とおっっしゃってもらっています。
④事業承継士である私のことを、無料のような感覚で使うことができます。もちろんのこと、業務委託契約は有償です。ただ、私はこれまでの奥様が受け取られていた給与額以内でお引き受けしたいと考えています。なぜそんなことができるのかと申しますと、私は常勤しないからです。つまり、必要に応じた日数しか出社しません。このことは次のような副次的なメリットも生み出します。
⑤会社内のコミュニケーションが文章化され、記録に残ります。つまり、これまでは口頭で済まされていたことが、メールなどの文章に残ることになります。なぜなら、私は常勤しないからです。毎日オフィスの専用デスクに座っていると、お互いに口頭で済んでしまうこともメールなどを使って連絡する必要があります。
ひと手間が増えて、面倒に感じられるでしょう。ただ、事業承継を考えられているのなら、このような「今までの当たり前」(暗黙知)を、一度棚卸ししておくことも大切です。
⑥そして、何よりのメリットは、いざ「事業承継を始めたい」と考えた頃には、私は貴社のことを隅々まで把握できているということです。
事業承継に関するアンケートを見ますと「誰に相談して良いのかわからない」という回答が多いそうです。
また、もっと言うと、「何を相談していいのかわからない」というのが実態ではないかと私は感じています。
まずは奥様を休ませてあげませんか?
経理の実務ができる事業承継士、林からの提案です。