卒業式のシーズンに事業承継士の林が思う、オーナー社長の退職金

3月。卒業式のシーズン。

あなたと同じクラスにマサル君がいた。あなたは手堅い人生を選んだというマサル君のことを思い出していた。マサル君は大学を卒業して公務員になった。

 

対するオレは45歳で会社を興し、波乱万丈とまでは言わないまでも商売の浮き沈みを味わって55歳の今日まで10年間やってきた。自分の性にあっていたと思う。

50才の同窓会でのこと。5年前のあの頃は今から思うと商売も自分も調子に乗っていた時だった。

酒の勢いもあって、あなたはマサルにこう言った。

「コウムインなんてキューツク(窮屈)な稼業、オレには一日だって無理だ。やってらんないよ!」

あなたの言葉の裏には「自分を縛るルールなどない。自由だ。」「自由に使えるおカネも時間も、たくさんある」そんな優越感がにじみ出ていた。

マサルは高校生のころから、人と争わない性格だった。

心の中では「見下された」と思ったかもしれない。けれど、マサルは酒の場の空気に紛れてその場を無言でやり過ごした。何も気取られることのないように、一切の感情を顔に出さずに。

 

けれど、けれど、けれど。

 

あと5年経って、最後に笑うのはどっちなんだろう。

通勤電車でチカンでもしない限り、飲酒運転でもしない限り、マサルは退職金をもらうだろう。まるで当然の権利のように。

ジンジブ(人事部)が彼のポストの次の担当者をあてがい、せいぜい半年間の引継ぎ期間を終えて、何の心配もなく職場を去るだろう。晴れ晴れとした気持ちで。

 

対するオレは?

 

「退職金」は退職しないともらえない。

当たり前のことだが、ここには重大な意味がある。

社長が退職するためには、後継者がいないといけない。つまり次の社長を引き受けてくれる人が、あなたにはいない。

これがまず、あなたが退職金を得るための第一関門。

 

続いて第二の関門。

「ガワシャ(わが社)は生命保険契約で自分の退職金を積み立てしているので安心だ」と豪語される社長も多くいらっしゃる。

 

半分正解で半分誤りです。

 

「最近業績が下降気味なので、役員報酬を下げた」そんな話もよく聞きます。

当面を乗り切るための苦肉の策で、現状を乗り切れれば何とかなると思っていませんか?つまり、将来自分がもらえる退職金に関係ないと思っていませんか?

 

税務署が黙っていません。

「直近の役員報酬と勘案して退職金が過大である」

そう言われたら一巻の終わり。もちろん争うことはできますが、いまさら昔を悔いても時はすでに遅し。

 

「表向きは退職して、今後も経営には関与し続ける」

こんな恐ろしいセリフは絶対に人前で言ってはNGですよ!

またも税務署が黙っていません。

あーあ。役員賞与に認定されてしまいました。タイムマシンに乗って過去に戻ることはできません。

 

「M&Aしちゃえばいい。自分の会社を売った代金が自分の財布に入るから。」

この場合、所得税の税率が退職金とは異なります。それに、売買代金は買い手さんとの合意で決まりますから、いくらになるのかわかりません。

そもそも、自分の会社を黙って売って自分だけその代金を得るなんて、社員達を出し抜いた、裏切ったような、後ろめたい気持ちになりませんか?

 

オーナー社長は、自分の「卒業」を自分自身の力で成し遂げなければなりません。最後の大仕事、いわば卒業論文です。

 

私はあなたの「卒業論文」を手伝う事業承継士です。

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